~VC×CFO対談~ VCが語るニーリーの大型資金調達の裏側

 
モビリティSaaS「Park Direct(パークダイレクト)」を運営する株式会社ニーリーは、シリーズAラウンドとして、SBIインベストメント株式会社、スパークス・グループ株式会社(未来創生3号ファンド)、三菱UFJキャピタル株式会社、新明和工業株式会社、横浜キャピタル株式会社、静岡キャピタル株式会社、小僧com株式会社を割当先とする、総額19.4億円の資金調達を実施しました。ニーリーの累計調達額は23億円となりました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000045188.html
今回の資金調達の裏側と投資家からみたニーリーの魅力について2度にわたり出資していただいたインベスターの三菱UFJキャピタル山本弘樹氏にCFOの島本がインタビューを実施しました。
 

山本 弘樹(三菱UFJキャピタル 投資第一部 次長)

2015年に一橋大学商学部を卒業後、三菱UFJ銀行に入行。豊田支社にて法人営業に携わった後、2018年4月より三菱UFJキャピタルに出向中。主にフィンテックの分野に注目して活動。【主な担当案件】TRUSTDOCK、Hubble、IB、ABCash Technologies、TERASS、Nealle

島本 大地 (ニーリー 執行役員/CFO)

2012年に京都大学経済学部を卒業後、有限責任あずさ監査法人にて上場企業監査・財務アドバイザリーに従事、その後2018年にドリームインキュベータにて子会社のコーポレート責任者、起業家向けの資金調達・M&Aを担当し、2021年7月よりニーリーに参画。
 

出会いからわずか3ヶ月でスピード投資を実現

 
島本:三菱UFJキャピタルさんとは、前回のご出資からのお付き合いとなりますが、山本さんは後任として、2021年の9月頃に初めてお会いしました。当時はどんな担当者が来るんだろう、と思いつつ、経営メンバーで緊張しながら事業説明をさせていただいたことを覚えています。
 
山本:皆さんに参加いただき、事業についてすごく丁寧にインプットしていただきました。その際に、「いま絶賛ファイナンスもしているところなんです。」という話をいただいた感じでしたよね。
 
島本:そうですね。まさにファイナンス真っ只中という感じの状況だったので、「着任早々に申し訳ないんですが、、笑」という形でご相談をさせていただきました。
 
山本:今回の資金調達は、着任した9月からクロージングまで約2-3か月くらいのスピード感で進めたいというお話でしたので、かなり短期間でキャッチアップしにいきました。以前からニーリーさんがどんなビジネスをやっているのかは知っていたものの、足元の状況についてはわかっていなかったので、そこをまずキャッチアップさせていただきました。前回投資させていただいたタイミングでは、導入社数自体は伸びてきていたと聞いていましたが、そこから約半年経って、売上もしっかりついてきており「順調に推移していそうだ」と理解しました。
 
島本:おっしゃる通り、前回投資いただいたタイミングから、オンボーディングも着々とすすんでいたタイミングだったと思います。
 
山本:しかも、代表の佐藤さん以外の経営メンバーの過去経歴を聞いてみると、前職でしっかり実績を残されている方々で、「このステージでも、いいメンバーが集まってきている」ということを感じました。仕事柄、いろんなベンチャー企業さんと毎日お話ししますが、よくあるケースとしては、社長ともう一人で事業を引っ張っていて、業務をほかの人になかなか任せられないということがあるんですよね。
 
島本:たしかにニーリーは組織を任せられる人材が揃っており、いい意味で社長が目立たない会社だと思います。
 
山本:ニーリーさんは実務能力の高い経営メンバーに権限委譲し、分担したうえで事業運営できているなと思っていました。マーケットもいい足元の数字も伸びてきているメンバーもいい、これは前向きに検討するしかないなということで、短期間でのクロージングに向けて動きました。
 
島本:かなり短期間でキャッチアップいただいて、そのスピードに感心していました。特に、事業数値の解像度が非常に高いなと感じており、会社をより良くするための建設的な議論や改善ができ、非常にいい機会だったと感じています。
 
山本:持ち上げていただいてありがとうございます。笑 ただ、そもそも私が細かい数字をみられるほど、ニーリーさんの事業の解像度が高いなと思っていました。きちんと事業のKPIがわかりやすくブレイクダウンされており、どこにボトルネックがあるのか?を自分達自身で発見できるような構造になっていたので、私もいろいろな数字が気になって質問できたのだと思います。
 
島本:きっちり構造化したうえで細かく数値管理していくことで、期待されるフォルムと違う数字が出てきたときに「あれ?」とアラートを察知することができて、事業を改善しやすいというメリットがあると考えています。
 
山本:そうですよね。ニーリーの事業は、地味なビジネスに見えるかもしれないですが、結構変数が多くて複雑だが奥の深いビジネスだなと思っています。それに関連して、いろいろな売上の伸び方・コストのかかり方があるが故に、きちんと細かくブレイクダウンして見ていかないと、前提が大きく崩れた時に取り返しがつかないことになってしまう。そこをしっかり理解したうえで細かくモニタリングできているところは素晴らしいと思います。
 
 

出資の決め手はSaaS企業としての独自の”勝ち筋”と”人”の強み

 
島本:投資検討にあたって難しかったところはありますか?
 
山本:いわゆるSaaSメトリクスでだけで語りきれるものではなく、単純なユニットエコノミクスの枠に収まらない点ですかね。ただ、第三者視点で資本市場からどう見られているのか?という観点でディスカッションできたことは、今後事業を拡大していくにあたって非常にいい機会だったと認識しています。
 
島本:確かに、駐車場の在庫獲得のためにいくらかかっていくら儲かるのかをシンプルに回答しにくい部分はあると思います。単純なSaaSメトリクスに当てはまらない難しさがある中で、一番の決め手は何でしたか?
 
山本:結局は「この人たちならやるんだろうな」というところが一番の決め手だと思います。どうしてもスタートアップにおいては、すべての事業の蓋然性を数字で説明しきることは難しく、ファジーな部分が残ってしまいます。とはいえ、事業を成長させ続けるためにPDCAを回し続けられるチームなんだろうなというのを感じていましたし、今後人員の拡大が重要になってくる中で、いい採用が引き続きできるんだろうなと感じたのもポイントだったと思います。
 
島本:山本さんの目からはPark Direct事業はどのように映っていますか?
 
山本:ビジネスモデル的に、まさにVCが投資して支援すべき会社だと感じていました。Park Directという事業は、導入が決まって以降、売上が発生するまでに時間も手間もかかる。一方で、最初の時期さえしっかり乗り越えられれば、将来的なリカーリングの売上が約束されているというビジネスモデルだと思います。具体的には、そもそもクライアントさんは地場に根差した歴史ある不動産会社が多く、クライアントさんが倒産するリスクが比較的少ないこと・業務フローに深く入り込むためスイッチングコストが高くチャーンレートが低いこと・たとえ駐車場が空車になったとしても空き待ち予約(※)によって、すぐに客付けができることなどがあげられます。こういった、「軌道に乗せるまでが大変だけど、将来的なポテンシャルが大きいような会社」こそ、VCが資金面で支援するビジネスだと思っています。
 
島本:ご出資いただく前後での弊社に対する印象の変化はありましたか?
 
山本:今のところは期待通りにうまく事業運営をしていただいているな、という印象を持っています。それはチームとしてうまく機能しているからだと思っています。
 
(※)すでに契約がついている駐車場に対して問い合わせを入れられ、空き次第連絡が来る機能

1番印象に残っていることは数えきれないストローク

 
島本:今回ご出資いただくなかでの思い出に残っていることはありますか?
 
山本:短期間で多くのことをキャッチアップさせていただくために、たくさんのストロークをさせていただいたことは、お互い大変だったなとおもっています。笑
山本:逆に島本さんが印象に残っていることはありますか?
 
島本:Park Directの重要機能であるサクセス部門の役割について、かなり踏み込んだご質問をしていただいたことですかね。社内の業務マニュアルを隅々まで確認されていたのが印象的でした笑。最終的にご質問いただいたことが、サクセス部門の重要性を見つめなおすいいきっかけになりました。
 
山本:事業における再現性をベースにファイナンスをして伸ばそう、と考えるのが投資家側の目線なので、その点を気にしていましたね。
 
 

インベスターからみたニーリーへの今後の期待とは

 
島本:これからニーリーに期待していることは何ですか?
 
山本:人員が増加する中で業務の型化を進めて頂き、よりレバレッジがかかる状態に仕上げていただくことだと思います。更にPark Directが伸びた先で、どんな車種がどのエリアにどれだけ停まっているのかなど、これまで蓄積してきたデータを活用してモビリティ領域への事業展開を期待しています。
 
山本:私個人として「社会の解像度を上げる」というニーリーのミッションが好きなんですよね。これだけITが発展しても、世の中にはまだまだわかりづらいことが多いなと思っているんです。本来こうあるべきなのに、なんで今こうなっているんだろうと。ニーリーが今やっていることは、まさに不動産・モビリティ領域におけるそれだと思っています。Park Directを中心としてビジネスを広げていくことで、世の中の解像度をより上げていっていただけることを期待しています。
 
島本:「解像度を上げる」という言葉は社内でも浸透している言葉なので、山本さんにも共感いただき非常に嬉しいです。
 
山本:影響されてますね笑